ぎゃしゃ浮砲台

浮足立った雑文

TEENEGER/オカモトコウキ

10年くらい前に通っていた駅前のバー。
そこでお酒を飲む時間は、大人ぶりたい背伸びと肩肘を張りたくない手軽さが、ちょうど良い温さだったから。
常連とまではいかないけれど、店主がこちらの顔も名前もすっかり覚えてくれた頃に、自分で持って行ったCDを店内で鳴らしてもらったことが、一度だけあった。

山下達郎『TREASURES』の「蒼氓」を、客が自分一人になった時に、ウイスキーを飲みながら聴いた。
なぜそんな事をお願いしたのか、その契機となった出来事はまるで覚えていない。
でもきっと、一人でサクッと飲み込むには苦くて、そんな苦さをヒロイックに浸りたいMっ気のような気持ちもあって、こんなリクエストをしたのだと思う。

思い出すと、恥ずかしさしか無い。

感傷的なフリをして‘“あの頃”に浸るセンチメンタルは独りよがりなスイーツ。
失ってしまった記憶を甘やかに思い出しながらウイスキーでも、なんてことに酔えるほど、厚顔になれなくなってきた。
ごめんなさい、ともっと言えたら、というタラレバに打ちのめされるから、浸れもしない。

あのバーで蒼氓を聴きながら飲んだウイスキーの恥ずかしさ、を思い出した一曲。

https://open.spotify.com/track/5jLd8GTjKkN75O5vONwLU8?si=hkCe3kTUTJWKYKcBTwymtQ