ぎゃしゃ浮砲台

浮足立った雑文

aikoを聴く⑤~暁のラブレター

「私ほどの女を振ったあの男なんて地獄に落ちれば良い、って思いながら●●って人の歌を聴いていた」
立ち呑み屋でグダグダと、3年も前の男の思い出を語った女が、歌に求めていたのは救いや癒やしでなく、呪詛だった。

 

「ひどい男だった。自分が悪者にならないように居なくなるなんて、最低」
そう言いながら、女の顔はますます紅潮していった。その紅さを生み出す感情は怒りだろうか。否、違う。
酒が進むごとに次々と零れ落ちた呪いの言葉は、女がまだ男のことを忘れられない証拠を積み上げていた。
自分の言葉が、それに呼応してくれる歌が、自分の恋慕と未練の想いを強めてしまうマゾヒスティックな行為であることも感覚的に理解しながら、一面では酔いしれている。

 

相手を呪っても自分は救われない。
自傷的ではあるけれど、独りよがりの想いを爆発させて、結局は自己解決しか無いのだ、とaikoはいつも歌っている。

 

5th Album 『暁のラブレター』 

暁のラブレター

暁のラブレター

 

 発売日:2003/11/27
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1 熱
2 彼の落書き
3 アンドロメダ
4 ふれていたい
5 夢のダンス
6 蝶々結び
7 ライン
8 帽子と水着と水平線
9 すべての夜
10 えりあし
11 白い服黒い服
12 風招き
13 天の川

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とても、しあわせそうだ。
しあわせが溢れて眠れず、暁の時に認(したた)めた封を閉じれないラブレターに一人でニヤついている。
やはり、aikoには浮かれていただかなければ。
不安な瞬間すら、愛し愛されている自信を抱いての地団駄ダンスできてしまうのが、かわいい。

 

アンドロメダ」で炸裂するピアノとaikoの声、鉄板の流儀で繰り出すお得意の半音ステップが今回は不安に感じない。浮かれることの不安定を乗りこなしている。

 

 

今までaiko頻出ワードであった「匂い」「香り」がほぼ出てこない点に大きな変化を感じた。

 

心なしか元気ない時は匂いで解る
鼻の効く利口な犬にもなってあげる

(白い服黒い服)

これも、今までのような湿ったエロは感じない。匂いや香り、だけでは無い愛情の確証を得られたからだろうか。

 

どんどん身軽に、素直に、無防備になれる人に出会えたことに浮かれる言葉を、これまでのaiko楽曲史上最高の金管アレンジで踊らせるこの曲に辿り着けて、本当に良かった。

 

あなたはあたしの一番星よ

(夢のダンス)