ぎゃしゃ浮砲台

浮足立った雑文

aikoを聴く③~『夏服』

「別れる男には花の名前を教えなさい」と書いたのは川端康成だった。
毎年咲く花を見る度に、愛した人を思い出すであろうから。
歌詞カードのチューリップをかじるaikoを見て、春夏秋冬の花とあの人の写真を、ひっそりと思い出している。


3rd Album 『夏服』

夏服

夏服

 

 発売日:2001/06/20

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1 飛行機
2 be master of life
3 ロージー
4 密かなさよならの仕方
5 終わらない日々
6 心日和
7 September
8 雨踏むオーバーオール
9 アスパラ
10 ボーイフレンド
11 初恋

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「夏服」というタイトルの軽やかさから正反対の重さ。
しつこく、執念と怨念が湧き、「さよなら」が積み上げられて襲ってくる。
「哀」の比重が特濃の、行き場の無い追憶。

ほぼ唯一とも言える浮かれポンチソング「ボーイフレンド」がこの中に含まれると、とても空虚で切ない陽気さに変わる。
いつか終わる、を前提とした浮かれポンチ。残酷過ぎませんか?


やっぱり残響として残ってしまうのは、香り。

遠くに香るあなたのにおい
手探りで探したあの日の事
(密かなさよならの仕方)

残響に引き摺られ、追憶のループに溺れている最強のフレーズは、

想いは 絶えず 絶えず 絶えず
(初恋)


悲観的に、傷を眺め、ウジウジと香りを思い出す、そんな湿ったaikoこそ魅力的だと感じていたけど、ここまでどっしりと追憶に身を浸されると、なんだか申し訳なくなる。
湿った面だけを、あなたに求めている訳でもない。
あぁ、やっぱり自分は、恋に浮かれポンチなaikoも好きなんだ。