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ぎゃしゃ浮砲台

浮足立った雑文

aikoを聴く①~『小さな丸い好日』

■序文

aikoという音楽家・作詞家をずっと避けている。
街中やCDショップでふと流れてくること以外では、出来るだけaikoの音楽に触れないようにしてきた。
嫌いだから、では無い。
好きになるに決まっているから、という気配がするから。
「好きになるのが怖い」、だから避けてきた。

 

確信的に思えてしまった楽曲は『桜の木の下』収録の「傷跡」という曲で、聴いた時に打ちのめされた感覚が、10数年経っても尾を引いている。
「傷跡」だけが特別なのか、本当に好きになってしまうのか、どんな点を好きになるのか、自分はaikoという怪物にどんな感覚で向き合うのか、そうこれは、怖いもの見たさ。

だから、aikoのアルバムを全て聴いてみよう、と思った。
耳から脳へ、aikoの声と音楽と言葉を注いだ時に自分がどうなるのか。

 


■1st Album『小さな丸い好日』

 

小さな丸い好日

小さな丸い好日

 

 発売日: 1999/4/21

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1 オレンジな満月
2 ジェット
3 私生活
4 歌姫
5 赤い靴
6 イジワルな天使よ 世界を笑え!
7 恋堕ちる時
8 夏にマフラー
9 ボブ
10 ナキ・ムシ
11 あした

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aikoっぽい。どの曲も一聴でaikoだ。
現在まで続くaiko流儀はこの時点で完成していた。完成というか、ここから大きな変化など無いのだろう。音楽と言葉の流儀は変わらず、時を経て変化するのはaikoの恋愛事情だけだ。

そんな憶測を現時点で感じるほど、「aikoっぽさ」だらけ。

 

「オレンジな満月」の歪な譜割り、「歌姫」の歌メロ着地点の曖昧さ、のようなセオリーから外れる不安定さを常に抱えているため、こちらの気持ちをザワつかせる。
不安定なメロディーを異常な歌唱スキルで納得させてしまうボーカルは、不安定なフリをしながら恋愛の主導権を握ろうとするaiko歌詞世界とぴったりとリンクする。

 

「あなたが飼い主ならば あたしは忠義を尽くす物に変わる こんなに好きなんだから 手を引く権利をあたしに下さい」(私生活)

 

ズバ抜けて一番、このアルバムとaiko流儀を象徴するのが「恋堕ちる時」。
リズミカルなのに歪なメロディーを乗りこなしながら、クドいほど"あなた"を求め続ける視線。
「ずっと、恋に満たされない」が一番魅力的なaikoだ。

歌い出しの一息のブレス、「におい」という言葉にまとわり付くエロス。

耳のうしろのにおいがのどを通ったなら あたしはあなたなしでは生きてゆけない体になるだろう(恋堕ちる時)

「におい」「かおり」という言葉はaikoの世界、特にエロスへ直結するイメージで、最も危険なトラップである。
aikoのにおい、に堕ちる準備は出来た。

 

あと、1~10曲でアルバム本編終了、という構成で最後の「あした」はビジネス上のオマケという位置づけでaikoらしさが全面に出てこないものの、サビ前で「え?これFolder?」と脊髄反射で期待してしまうコモリタミノル節は最高です。